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掲載内容は2026年7月30日時点で確認した公式情報をもとに作成しています。
法人向けVPNは、料金や知名度だけで選ぶのではなく、「拠点間を接続したいのか」「社外から社内システムへ接続したいのか」といった用途から選ぶことが重要です。
利用人数や拠点数、扱う情報、社内の運用体制によって適した構成は変わります。VPNを導入するだけで、企業の通信や端末が完全に安全になるわけでもありません。
この記事では、専任のネットワーク担当者がいない中小企業にも分かるように、法人向けVPNの種類、選び方、導入前の確認ポイントを整理します。
法人向けVPNは用途から選ぶ
VPNは「Virtual Private Network」の略称です。インターネットなどのネットワーク上に、限られた利用者が通信するための経路を構築する仕組みを指します。
ただし、法人向けVPNには複数の利用方法があります。最初に「誰が、どこから、何へ接続するのか」を整理しましょう。
拠点同士を接続したい場合
本社、支店、店舗、工場などをネットワークで接続したい場合は、拠点間接続に対応したVPNを検討します。
たとえば、支店から本社にある業務システムへ接続する、複数店舗で社内データを共有するといった用途です。
この場合は次の項目が重要になります。
- 接続する拠点数
- 拠点ごとの利用人数
- 業務で必要な通信速度
- 障害時の影響範囲
- ルーターなどの機器管理
- 保守・監視サービスの有無
拠点が増える予定がある企業は、追加時の費用や設定作業も確認しておく必要があります。
自宅や外出先から社内へ接続したい場合
テレワークや出張先から社内システムへ接続する場合は、リモートアクセス型のVPNが候補になります。
この用途では、通信方式だけでなく利用者の認証と端末管理が重要です。
- 多要素認証に対応しているか
- 接続を許可する端末を制限できるか
- 利用者ごとに権限を設定できるか
- 接続履歴を確認できるか
- 退職・異動時にアカウントを停止できるか
パスワードだけに依存した運用は、認証情報が漏れた場合のリスクを高める可能性があります。
クラウドサービスへの接続を管理したい場合
業務システムの多くがクラウドへ移行している場合は、従来型のVPNですべての通信を社内経由にする方法が適しているとは限りません。
通信の集中によって速度が低下したり、VPN装置がボトルネックになったりする可能性があるためです。
接続先が社内サーバーなのか、クラウドサービスなのかを区別し、必要に応じてクラウド型のアクセス管理やゼロトラスト関連サービスも比較しましょう。
VPNだけでは解決できない課題もある
VPNは通信経路を保護するための手段ですが、次の問題を単独で防げるわけではありません。
- 利用者がフィッシングにだまされる
- 端末がマルウェアに感染する
- パスワードが使い回される
- 退職者のアカウントが残る
- VPN機器の更新が放置される
- 必要以上のアクセス権限が与えられる
VPNを導入する際は、端末管理、認証、権限管理、アップデート、従業員教育も合わせて検討してください。
中小企業が確認すべき対策の全体像は、中小企業のセキュリティ対策は何から?今すぐ確認したい10項目で整理しています。
法人向けVPNの主な種類
法人向けVPNは、通信に使うネットワークや構成によって複数の種類に分けられます。
名称や提供範囲は事業者によって異なるため、契約前に公式資料で確認してください。
インターネットVPN
インターネットVPNは、既存のインターネット回線を利用して暗号化された通信経路を構築する方式です。
既存回線を活用しやすい一方、通信品質は利用する回線や混雑状況などの影響を受ける可能性があります。
比較する際は、回線・機器・設定・保守が料金に含まれるかを確認しましょう。
IP-VPN
IP-VPNは、通信事業者が管理する閉域網を利用して拠点を接続する方式です。
複数拠点を安定して接続したい企業などで候補になりますが、利用可能なエリア、開通までの期間、必要な機器、保守範囲はサービスごとに異なります。
「閉域網だから絶対に安全」とは判断せず、認証や端末管理なども含めて確認することが重要です。
エントリーVPN
エントリーVPNは、一般にブロードバンド回線と通信事業者の閉域網などを組み合わせたサービスです。
コストと通信品質のバランスを重視する場合に候補になります。ただし、提供事業者によって構成や品質保証の範囲が異なるため、名称だけで判断しないようにしましょう。
クラウド型・リモートアクセス型VPN
クラウド上の管理機能や専用アプリを利用し、従業員の端末から業務システムへ接続するタイプです。
テレワークへの導入を進めやすい可能性がある一方、利用者数に応じた料金、対応OS、管理機能、ログ保存期間などを確認する必要があります。
種類ごとの違い
| 種類 | 主な用途 | 確認したい点 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| インターネットVPN | 拠点間・リモート接続 | 回線品質、機器、保守 | 既存回線を活用したい |
| IP-VPN | 拠点間接続 | エリア、納期、品質、費用 | 複数拠点を安定して接続したい |
| エントリーVPN | 拠点間接続 | 構成、品質保証、保守 | 費用と品質のバランスを取りたい |
| クラウド型VPN | テレワーク・社外接続 | 認証、端末、ログ、ID管理 | 利用者の追加・削除を管理したい |
この表は一般的な整理です。実際の構成や機能は提供事業者によって異なるため、公式資料を確認してください。
法人向けVPNを選ぶ7つの確認ポイント
1.利用目的
最初に、VPNを導入して何を実現したいのかを明確にします。
- 本社と支店を接続する
- 自宅から社内システムへ接続する
- 外出先からファイルを確認する
- 特定の取引先だけに接続を許可する
- クラウドサービスへの接続を管理する
複数の用途がある場合は、用途ごとに利用者と接続先を書き出すと比較しやすくなります。
2.利用人数と拠点数
現在の人数だけでなく、今後増える可能性も確認します。
サービスによって、利用者単位、端末単位、拠点単位など料金体系が異なる場合があります。初期費用だけでなく、人数や拠点を追加した場合の費用も比較してください。
3.通信速度と安定性
Web会議、大容量ファイル、クラウド業務システムなどを頻繁に利用する場合は、必要な通信量を考慮します。
VPN接続によって通信が特定の機器や拠点へ集中すると、業務上の待ち時間が増える可能性があります。
導入前に試用やテストができる場合は、実際の業務時間帯で速度と安定性を確認しましょう。
4.認証・端末管理・ログ管理
法人利用では、暗号化方式だけでなく「誰が、どの端末から接続したか」を管理できることが重要です。
- 多要素認証
- 端末の登録・制限
- 利用者ごとの権限
- 接続ログ
- 管理者への通知
- アカウントの一括停止
- ログの保存期間
必要な機能は企業の規模や扱う情報によって異なります。安全性を一律に断定せず、公式仕様と自社のルールを照合してください。
5.既存環境との連携
既存のルーター、ファイアウォール、認証システム、クラウドサービスと連携できるか確認します。
Microsoft Entra IDなどのID管理サービスを利用している場合は、既存アカウントと連携できるかも比較ポイントになります。
連携には追加プランや設定作業が必要な可能性があるため、事前に事業者へ確認しておくと安心です。
6.設定・保守・障害対応
専任担当者がいない企業では、導入後の運用負担を特に重視しましょう。
- 初期設定を依頼できるか
- 機器の設置が必要か
- アップデートは誰が行うか
- 障害時の連絡先はどこか
- 対応時間は何時までか
- 機器故障時の交換条件
- 設定変更を依頼できるか
低価格でも、自社での設定や障害対応が多ければ、総合的な負担が大きくなる可能性があります。
7.初期費用と継続費用
法人向けVPNの費用は、方式、利用者数、拠点数、回線、機器、保守内容などで変わります。
比較時は次の費用を分けて整理します。
- 初期設定費用
- 機器購入・レンタル費用
- 回線費用
- 月額利用料
- 利用者・拠点の追加費用
- 保守・監視費用
- 解約・撤去時の費用
料金相場だけで予算を確定せず、同じ利用条件で見積もりを取得しましょう。
導入前に整理する要件チェックリスト
比較を始める前に、次の項目を社内で整理してください。
- VPNを利用する目的
- 接続する拠点とシステム
- 利用予定人数
- 利用する端末とOS
- 社有端末・私物端末の扱い
- 必要な通信速度
- 扱う情報の重要度
- 必要な認証方法
- ログの確認担当者
- 利用者追加・削除の担当者
- 障害時の連絡方法
- 現在利用している回線・機器
- 導入希望時期
- 初期予算と月額予算
この一覧を事業者へ提示すると、条件の異なるサービスを同じ軸で比較しやすくなります。
法人向けVPN導入で起こりやすい失敗
費用だけで選ぶ
月額料金だけを比較すると、機器、回線、初期設定、保守などの費用を見落とす可能性があります。
3年間など一定期間の総費用と、社内担当者の運用負担を合わせて比較しましょう。
同時接続数や通信量を見落とす
契約上の利用可能人数と、同時に接続できる人数が異なる場合があります。
全従業員が同じ時間帯に接続する可能性がある場合は、想定ピーク時の人数をもとに確認してください。
VPNを導入すれば安全だと考える
VPN機器やソフトウェアにも脆弱性が見つかる場合があります。
IPAは、VPNを含むテレワーク環境について、修正プログラムの適用、適切なパスワード管理、多要素認証の検討などを案内しています。
機器やソフトを導入した後も、アップデートや設定の見直しを継続する必要があります。
運用担当者を決めていない
導入時に設定できても、利用者の追加・削除、ログ確認、機器更新を担当する人がいなければ、運用が次第に形骸化します。
主担当者と代替担当者を決め、定期的な確認作業を社内ルールに組み込みましょう。
退職者や紛失端末の権限を残す
アカウントや端末の利用停止が遅れると、不正接続につながる可能性があります。
退職、異動、端末交換、紛失が発生したときの連絡先と停止手順を事前に決めてください。
VPN以外の対策も組み合わせる
多要素認証を利用する
可能であれば、パスワードだけではなく多要素認証に対応したサービスを検討します。
ただし、多要素認証に対応していても、追加料金や対象プランなどの条件が設けられている場合があります。
パスワードを適切に管理する
複数人で同じアカウントを共有すると、利用者の特定や退職時の停止が難しくなります。
従業員ごとにアカウントを発行し、業務用パスワードの管理方法も整えましょう。
あわせて、パスワード管理ツールの選び方も確認してください。
端末を管理する
社内ネットワークへ接続する端末について、OSやセキュリティソフトの更新、画面ロック、紛失時の対応などを定めます。
私物端末の利用を認める場合は、保存できるデータや利用できるアプリの範囲も検討が必要です。
VPN以外の選択肢も比較する
業務システムの多くがクラウド化されている場合や、利用者ごとに細かくアクセスを制御したい場合は、ゼロトラストを前提としたサービスなどが候補になることもあります。
「VPNとゼロトラストのどちらが常に優れている」という関係ではありません。既存環境、予算、管理体制をもとに専門事業者へ相談してください。
法人向けVPNを比較するときの進め方
自社要件を比較表にする
まず、必須条件と希望条件を分けます。
「多要素認証は必須」「24時間対応は希望」のように優先順位を付けると、候補を絞りやすくなります。
候補を2〜3サービスに絞る
最初から多数のサービスを細かく比較すると、判断軸が曖昧になりがちです。
用途、人数、拠点数、運用体制に合う候補を2〜3サービスに絞り、同じ条件で資料請求や見積もりを行いましょう。
実際の業務環境で確認する
試用や検証が可能な場合は、次の項目を確認します。
- 通常業務時の接続速度
- Web会議中の安定性
- 初回設定の難しさ
- 多要素認証の操作
- 接続エラー時の案内
- 管理画面の分かりやすさ
- 利用者の追加・削除方法
- ログの確認方法
検証条件と結果を記録しておくと、導入判断の根拠になります。
契約条件を公式情報で確認する
最終判断前に、料金だけでなく次の条件を確認してください。
- 最低利用期間
- 解約条件
- 料金改定の扱い
- サポート範囲
- 障害時の責任分界
- データやログの保存期間
- 委託先・再委託先の扱い
- セキュリティに関する公式資料
不明点は営業担当者へ確認し、回答を記録しておくと安心です。
法人向けVPNに関するFAQ
法人向けVPNと個人向けVPNの違いは?
法人向けサービスでは、利用者管理、端末管理、ログ、拠点間接続、法人向けサポートなどが提供される場合があります。
ただし、対応機能はサービスやプランによって異なります。個人向け・法人向けという名称だけで判断せず、公式仕様を確認してください。
法人VPNの費用は何で変わりますか?
VPNの方式、利用人数、拠点数、回線、機器、通信帯域、保守・監視内容などによって変わります。
同じ条件で複数の見積もりを取得し、初期費用と月額費用を分けて比較しましょう。
無料VPNを業務で利用してもよいですか?
業務利用の可否は、利用規約、管理機能、ログ、サポート、扱う情報などを確認して判断する必要があります。
無料であることだけを理由に選ばず、企業の情報管理ルールと照らし合わせてください。
拠点間VPNとリモートアクセスVPNの違いは?
拠点間VPNは本社・支店などのネットワーク同士を接続する用途、リモートアクセスVPNは従業員の端末から社内システムなどへ接続する用途が中心です。
両方に対応する構成もありますが、必要な機器や契約条件は事業者へ確認してください。
VPNを使えば通信は完全に安全になりますか?
VPNの利用だけで安全性を保証することはできません。
認証情報の漏えい、端末の感染、機器の脆弱性、設定ミスなどのリスクがあるため、アップデート、多要素認証、端末管理、権限管理も必要です。
VPNとゼロトラストはどちらを選ぶべきですか?
接続先、既存環境、利用者数、クラウド利用状況、社内の管理体制によって判断が変わります。
二者択一ではなく、VPNを残しながら一部のアクセス管理を見直す方法もあります。専門事業者へ現在の構成を伝えて相談してください。
導入前に事業者へ何を確認すべきですか?
対応用途、同時接続数、認証、端末管理、ログ、回線・機器、設定支援、保守、障害対応、総費用、解約条件を確認しましょう。
まとめ|用途と運用体制を整理してから比較する
法人向けVPNは、料金やサービス名より先に、利用目的を整理することが重要です。
拠点間接続とリモートアクセスでは、必要な構成や確認項目が異なります。利用人数、拠点数、通信量、認証、端末管理、ログ、保守体制を整理したうえで比較しましょう。
また、VPNは企業のセキュリティ対策の一部です。アップデート、多要素認証、パスワード管理、端末管理と組み合わせて運用する必要があります。
まずは要件チェックリストを作成し、条件に合う2〜3社から公式資料や見積もりを取得してください。

