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掲載内容は2026年7月28日時点で確認した公式情報をもとに作成しています。
中小企業のセキュリティ対策は、すべての製品や仕組みを一度に導入する必要はありません。
まずは「守るべき情報」「利用中の端末やサービス」「未対応のリスク」を把握し、業務停止や情報流出につながりやすい項目から改善することが大切です。
この記事では、専任担当者がいない中小企業でも確認しやすいように、基本的なセキュリティ対策を10項目のチェックリストに整理します。
対策状況や必要な水準は企業によって異なります。詳細は、IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」や専門家に確認してください。
- 中小企業のセキュリティ対策は現状確認から始める
- 中小企業のセキュリティ対策チェックリスト
- 1. セキュリティの責任者を決める
- 2. 保有情報・端末・サービスを把握する
- 3. OS・ソフトウェアを更新する
- 4. パスワードの使い回しを防ぐ
- 5. 多要素認証を設定する
- 6. アクセス権限と退職者アカウントを管理する
- 7. バックアップを取り、復元できるか確認する
- 8. 従業員への教育と注意喚起を行う
- 9. クラウドサービスと委託先を確認する
- 10. 事故発生時の連絡先と初動手順を決める
- 未対応項目は優先順位を付けて改善する
- セキュリティ対策をツール導入だけで終わらせない
- 自社だけで判断できない場合の相談先
- 中小企業のセキュリティ対策に関するFAQ
- まとめ|未対応項目に担当者と期限を設定しよう
中小企業のセキュリティ対策は現状確認から始める
中小企業のセキュリティ対策では、最初から高額な製品を導入することよりも、自社の現状を把握することが重要です。
まず、次の情報を整理しましょう。
- どのような情報を保有しているか
- 業務で利用している端末やシステムは何か
- 誰が各システムを管理しているか
- 事故が起きた場合に停止する業務は何か
- 顧客や取引先に影響する情報は何か
- 外部の事業者へ委託している業務は何か
例えば、顧客情報を保存しているクラウドサービスが分かっていなければ、適切な権限管理や退職者のアカウント削除を行えません。
最初に情報・端末・サービス・担当者を一覧にすると、優先的に対策すべき場所が見えやすくなります。
IPAのガイドラインも、中小企業が自社の状況に応じて段階的に対策を進められる構成になっています。
重要
本記事のチェックリストは、自社の状況を把握するための簡易版です。すべてにチェックが付いても、個別企業の安全性を保証するものではありません。
中小企業のセキュリティ対策チェックリスト
次の表を使い、「未確認」「対応中」「対応済み」のいずれかで確認してください。
| チェック項目 | 優先度 | 状況 | 次に行うこと |
|---|---|---|---|
| セキュリティ責任者を決めている | 高 | 未確認 / 対応中 / 対応済み | 担当者と連絡先を決める |
| 保有情報・端末・サービスを把握している | 高 | 未確認 / 対応中 / 対応済み | 管理台帳を作成する |
| OS・ソフトウェアを更新している | 高 | 未確認 / 対応中 / 対応済み | 更新設定を確認する |
| パスワードの使い回しを防いでいる | 高 | 未確認 / 対応中 / 対応済み | 管理方法を統一する |
| 多要素認証を設定している | 高 | 未確認 / 対応中 / 対応済み | 重要アカウントから設定する |
| アクセス権限を管理している | 高 | 未確認 / 対応中 / 対応済み | 不要な権限を削除する |
| バックアップと復元確認を行っている | 高 | 未確認 / 対応中 / 対応済み | 復元テストを実施する |
| 従業員教育を行っている | 中 | 未確認 / 対応中 / 対応済み | 注意事項を共有する |
| クラウド・委託先を確認している | 中 | 未確認 / 対応中 / 対応済み | 契約と役割分担を確認する |
| 事故発生時の連絡手順を決めている | 高 | 未確認 / 対応中 / 対応済み | 緊急連絡表を作成する |
「未確認」が多くても、すべてを同時に改善する必要はありません。優先度が高く、事故発生時の影響が大きい項目から担当者と期限を決めましょう。
1. セキュリティの責任者を決める
最初に、社内のセキュリティ対策を管理する責任者を決めます。
専任担当者を配置できない場合は、経営者、総務担当者、IT担当者などが兼任しても構いません。重要なのは、問題が起きたときに誰が判断し、誰へ連絡するかが分かる状態にすることです。
最低限、次の役割を整理します。
- セキュリティ対策の責任者
- 端末やアカウントの管理担当者
- 事故発生時の社内連絡先
- 契約しているIT事業者の連絡先
- 顧客・取引先への連絡を判断する責任者
責任者だけに作業を集中させず、経営者が必要な予算や人員を判断できる体制も必要です。
2. 保有情報・端末・サービスを把握する
守る対象が分からなければ、必要なセキュリティ対策も判断できません。
次の項目を一覧にしましょう。
- 顧客・取引先情報
- 従業員情報
- 契約書や請求書
- 会計・決済情報
- 営業資料や技術情報
- パソコン、スマートフォン、タブレット
- サーバー、NAS、外部記録媒体
- クラウドストレージ
- 会計ソフトや業務SaaS
- 外部委託先
一覧には「管理者」「保存場所」「利用者」「重要度」も記録すると、対策の抜けを見つけやすくなります。
個人の判断で導入されたクラウドサービスや、現在は使われていないアカウントが残っていないかも確認しましょう。
3. OS・ソフトウェアを更新する
パソコンやスマートフォンのOS、ブラウザ、業務ソフトは、可能な範囲で最新の状態に保ちます。
確認対象には次のものがあります。
- WindowsやmacOS
- スマートフォンのOS
- Webブラウザ
- オフィスソフト
- ウイルス対策ソフト
- ルーターやネットワーク機器
- WebサイトのCMSやプラグイン
- 業務で利用する各種アプリ
自動更新を有効にできるものは設定し、業務への影響を確認する必要があるシステムは、更新担当者と実施手順を決めます。
サポートが終了したOSやソフトウェアを使い続けている場合は、更新または移行を検討してください。
4. パスワードの使い回しを防ぐ
複数のサービスで同じパスワードを使用すると、ひとつのサービスから認証情報が漏れた場合に、別のサービスへ不正ログインされる可能性があります。
社内では、次のルールを確認しましょう。
- サービスごとに異なるパスワードを設定する
- 共有アカウントを必要以上に増やさない
- パスワードをメールやチャットに平文で残さない
- 初期パスワードを変更する
- 退職・異動時に認証情報を見直す
- 管理者アカウントを通常業務に使わない
多数の認証情報を安全に管理する方法については、関連記事「法人向けパスワード管理ツールの選び方」で詳しく確認できる構成にします。
パスワード管理ツールを導入する場合も、それだけで安全性が保証されるわけではありません。管理者権限、復旧方法、従業員の運用ルールをあわせて確認してください。
5. 多要素認証を設定する
多要素認証とは、パスワードに加えて、認証アプリや端末など別の要素を使って本人確認を行う仕組みです。
すべてのサービスで一度に設定できない場合は、次のような重要アカウントから優先します。
- メール
- クラウドストレージ
- 会計・決済サービス
- 管理者アカウント
- 顧客情報を扱うサービス
- Webサイトの管理画面
利用できる認証方法や復旧手順はサービスごとに異なります。バックアップコードの保管方法や、担当者が退職した場合の引き継ぎ方法も決めておきましょう。
6. アクセス権限と退職者アカウントを管理する
従業員には、業務に必要な範囲だけアクセス権限を与えることが基本です。
全員に管理者権限を与えたり、部署間で共通のアカウントを使い回したりすると、問題が起きたときに原因を確認しにくくなります。
定期的に次の項目を点検してください。
- 現在の利用者一覧
- 管理者権限を持つ人
- 長期間使われていないアカウント
- 退職者・異動者のアカウント
- 外部委託先へ付与した権限
- 共有フォルダの閲覧範囲
- APIや外部連携の権限
入社・異動・退職時の対応を手順化すると、削除漏れを減らしやすくなります。
7. バックアップを取り、復元できるか確認する
バックアップは、保存しているだけでは十分とは限りません。
障害やサイバー攻撃の影響を受けないよう、通常の業務環境とは分けて保管し、実際に復元できるか確認する必要があります。
確認したいポイントは次のとおりです。
- バックアップ対象
- 保存頻度
- 保存期間
- 保存場所
- アクセスできる人
- 暗号化の有無
- 復元手順
- 最後に復元確認した日
パソコンと常時接続された保存先だけにバックアップすると、事故発生時に同時に影響を受ける可能性があります。
必要な構成は企業やシステムによって異なるため、契約している事業者や専門家に確認してください。
8. 従業員への教育と注意喚起を行う
技術的な対策だけでなく、従業員が不審なメールや操作に気付ける状態を作ることも重要です。
社内で共有したい内容には、次のものがあります。
- 不審なメールや添付ファイルを開かない
- メールの表示名だけで送信者を判断しない
- IDやパスワードを入力する前にURLを確認する
- 不審な画面が表示されたら操作を中断する
- 私物端末やUSBメモリの使用ルールを守る
- 誤送信や紛失が起きたらすぐに報告する
- 生成AIや外部サービスへ機密情報を入力しない
事故を隠さず早期に報告できる環境も必要です。従業員個人を責める運用にすると、報告が遅れるおそれがあります。
9. クラウドサービスと委託先を確認する
クラウドサービスを利用していても、自社側の設定や運用が不要になるわけではありません。
導入前と定期点検時に、次の項目を確認しましょう。
- サービスへ保存する情報
- 利用者とアクセス権限
- 多要素認証の有無
- データの保存・取り扱い
- バックアップやエクスポート方法
- 障害・事故発生時の連絡方法
- 解約後のデータ処理
- 委託・再委託の取り扱い
- ログの確認方法
- 自社と提供事業者の責任範囲
セキュリティ認証や機能の有無だけで、「自社にとって安全」とは断定できません。取り扱う情報や利用方法に合っているかを確認することが大切です。
SaaSを比較している場合は、「SaaS導入で失敗しない選び方」で、機能・契約・運用面の確認項目も確認してください。
10. 事故発生時の連絡先と初動手順を決める
事故が起きてから連絡先を探すと、対応が遅れる可能性があります。
平常時に、次のような事態を想定しておきましょう。
- 不審なメールを開いた
- マルウェア感染が疑われる
- パソコンやスマートフォンを紛失した
- 顧客情報を誤送信した
- アカウントへ不正ログインされた
- ファイルが開けなくなった
- Webサイトが改ざんされた
- クラウドサービスが利用できなくなった
緊急連絡表には、社内責任者、IT事業者、サービス提供事業者、保険会社、必要に応じた専門窓口などを記録します。
機器をネットワークから切り離すべきか、電源を切るべきかなど、適切な初動は状況によって異なります。判断できない場合に相談する連絡先を決めておくと安心です。
未対応項目は優先順位を付けて改善する
チェックリストの未対応項目は、次の4つの軸で優先順位を付けます。
- 被害が発生する可能性
- 被害が発生した場合の影響
- 復旧に必要な時間と費用
- 顧客・取引先への影響
最優先で確認したい項目
次の項目は、業務停止や情報流出に直結しやすいため、早めに確認します。
- 更新されていない端末やソフトウェア
- 重要アカウントの多要素認証
- 退職者・不要アカウント
- バックアップと復元手順
- 事故発生時の連絡先
次に進めたい組織的な対策
基本的なリスクを確認した後は、属人的な運用を減らします。
- 責任者と役割分担の明確化
- アカウント発行・削除手順
- 情報の取り扱いルール
- 従業員教育
- 外部委託先の確認
- 定期点検日の設定
社内だけで判断が難しい場合は、IT事業者や情報セキュリティの専門家へ相談してください。
セキュリティ対策をツール導入だけで終わらせない
セキュリティ製品を導入しても、運用されていなければ十分に機能しない可能性があります。
よくある注意点は次のとおりです。
- アラートを確認する担当者がいない
- 管理者アカウントを共有している
- 退職者のアカウントが残っている
- バックアップから復元できるか確認していない
- 従業員が社内ルールを知らない
- 委託先との責任範囲が分からない
「製品を導入したから安全」ではなく、誰が、いつ、何を確認するかまで決めることが重要です。
IT環境全体を整理する場合は、「中小企業のITインフラ見直し手順」もあわせて確認してください。
自社だけで判断できない場合の相談先
中小企業向けのセキュリティ情報や支援制度は、公的機関からも提供されています。
主な確認先は次のとおりです。
- IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」
- IPA「SECURITY ACTION」
- 中小企業庁「中小企業の情報セキュリティ」
- IPA「中小企業向けセキュリティ対策支援者リスト」
- IPA「サイバーセキュリティお助け隊サービス」
IPAのガイドラインは、経営者が認識すべき事項と、社内で対策を実践するための手順に分けて整理されています。
制度やガイドラインは更新される場合があります。利用前に最新版と対象条件を公式サイトで確認してください。
中小企業のセキュリティ対策に関するFAQ
中小企業もサイバー攻撃の対象になりますか?
企業規模だけを理由に、攻撃や情報漏えいのリスクがなくなるわけではありません。
中小企業も顧客情報や取引先情報を保有し、サプライチェーンの一部を担っています。自社だけでなく、取引先へ影響が及ぶ可能性も考えて対策する必要があります。
最低限、何から始めればよいですか?
まず、責任者、保有情報、利用端末・サービス、重要アカウント、バックアップ、緊急連絡先を確認してください。
未対応項目の中から影響が大きいものを3つ程度に絞り、担当者と期限を決めると進めやすくなります。
セキュリティ対策にはどの程度の費用が必要ですか?
必要な費用は、従業員数、拠点数、取り扱う情報、利用中のシステム、求められる対策水準によって異なります。
一律の金額だけで判断せず、最初にリスクと優先順位を整理したうえで、複数の事業者へ確認してください。
ウイルス対策ソフトだけで十分ですか?
ウイルス対策ソフトは対策の一部です。
アカウント管理、多要素認証、ソフトウェア更新、バックアップ、従業員教育、事故対応なども組み合わせる必要があります。
クラウドサービスを使えば安全ですか?
クラウドサービスの利用だけで、自社の安全性が保証されるわけではありません。
利用者の権限設定、パスワード、多要素認証、保存する情報、端末管理など、自社側で確認すべき項目があります。サービスの仕様と責任範囲は公式情報や契約条件で確認してください。
専任担当者がいない場合はどうすればよいですか?
経営者や総務担当者などが責任者を兼任し、技術的な判断が必要な部分を外部の事業者や専門家へ相談する方法があります。
社内担当者と外部事業者の役割分担を明確にすることが重要です。
取引先からセキュリティチェックシートを求められたらどうしますか?
実際の対策状況を担当部署や委託先に確認し、根拠のある内容を回答してください。
未確認の項目を推測で「対応済み」とせず、確認中または未対応であることを整理したうえで、改善計画を検討します。契約や法的判断を含む場合は、担当部門や専門家へ確認してください。
まとめ|未対応項目に担当者と期限を設定しよう
中小企業のセキュリティ対策は、自社の現状を確認し、影響が大きい項目から改善することが基本です。
最初に確認したいのは、次の項目です。
- 責任者
- 保有情報と利用サービス
- ソフトウェア更新
- パスワードと多要素認証
- アクセス権限
- バックアップ
- 従業員教育
- 委託先管理
- 事故発生時の連絡先
チェックリストを埋めるだけで終わらせず、未対応項目に担当者と期限を設定しましょう。
自社だけで判断できない場合は、IPAの最新ガイドラインや公的な支援情報を確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。

